植物生育調節剤についてAbout plant growth regulators

植物生育調節剤とは

生育調節剤とは、農作物など有用植物の成長や発育をコントロールして、品質を高めたり、収量を上げたり、不良条件でも収量を安定させたり、生産上の労力を省いたりするために用いる薬剤を指します。
PGR(Plant Growth Regulator)などとも呼ばれますが、農薬登録の上では「植物成長調整剤」となっています。
農薬登録されている生育調節剤の主な成分は植物ホルモンや、それに類似した活性をもつ有機化合物(生理活性物質)が主体です。また特定の効果を示す無機物、天然抽出物あるいは発酵生成物などの複合物質も含まれます。

植物生育調節剤の種類

植物生育調節剤は水稲、畑作物、野菜、果樹、花き、芝生などいろいろな分野で利用されています。
その利用目的も生育の促進、生育の抑制、開花期・熟期の調整、品質の向上など様々です。
農薬登録されている植物生育調節剤について、対象作物の分野別に主な使用目的を紹介します。

対象作物別による植物生育調節剤

水 稲
ムレ苗防止、苗の根の伸長促進・発根促進
節間短縮による倒伏軽減(※1)
直播水稲の発芽率の向上・苗立歩合の安定

畑作物(麦、大豆、ばれいしょ、かんしょなど)
節間伸長抑制による倒伏軽減
貯蔵中の萌芽抑制

野菜(トマト、ナス、きゅうり、いちごなど)

果樹(ぶどう、みかん、りんごなど)
新梢などの伸長抑制
無種子化、果粒肥大(※3)
落果防止

花き(きく、カーネーションなど)

芝生
草丈の伸長抑制(※5)
根の伸長・萌芽促進など

水稲の倒伏軽減(※1)
水田では、気象条件や栽培条件によって収穫の前にイネが倒れることで、登熟が不十分となったり、穂が水に浸かって発芽したり、また収穫作業に手間がかかったりと収量や品質の低下をきたすことがあります。
「倒伏軽減剤」の成分は、植物の細胞を縦方向に伸長させる植物ホルモン(ジベレリン)の植物体内での合成を阻害することにより、イネの草丈を5~10%程度低くして収穫期まで倒れにくくします。

▲無処理
▲処理

トマト、ナスの着果増進、果実の肥大促進(※2)
トマトは気温の高低や日照不足などによって花が咲いても実が着かなかったり、若い実が育たずに落ちてしまったりすることがよくあります。
植物ホルモンのオーキシン類と同じ作用のある生育調節剤は、トマトの開花期に散布すると落花(果)を防いだり、果実の肥大を促進させることができます。

ぶどうの種なし化(※3)
最近はいろいろな品種の種なしブドウがありますが、よく知られているデラウェアもそのままでは種のあるブドウとなります。種なしブドウを作るには植物ホルモンの一種であるジベレリンを使います。ブドウの花が咲く前にジベレリンを処理することで、受粉しなくても実ができますが、粒が小さいままのため、さらに開花後もう一度ジベレリンを処理して果実を大きくします。

▲無処理
▲処理

花きの伸長抑制(※4)
草花の苗や鉢物の花などは、節間が詰まって徒長していないものが好まれます。茎の伸長を抑える薬剤を処理することにより、花の大きさが小さくなることなく、苗や鉢物などの草姿を整えることができます。

▲無処理
▲処理

芝の刈り込み軽減(※5)
刈り込みは芝生の管理のなかでも最も頻繁に行われる作業です。生育調節剤にはこの刈り込み労力を軽減できる「抑草剤」もあります。また、最近環境保護の観点から刈りカスは産業廃棄物としての処分が行われており、ゴルフ場などではこの刈りカス量の削減目的としても利用されています。