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水田における簡易なシバ畦畔の造成法 (2017年1月6日改訂版)


 シバ(Zoysia japonica Steud. 別名:ノシバ)は北海道南部から九州まで広く自生し、草高が低めで見た目も美しく、歩行性や視認性に優れ、緊密に広がるほふく茎や根による土壌流亡防止力も大きいため、水田畦畔における望ましい植生の一つと考えられる。そこで、急傾斜地に放牧用のシバ草地を低コストで造成するために開発された「セル苗を用いたシバ草地造成法」4)と、水田畦畔で省力的にシバを優占化させるために開発された「抑草剤、除草剤を利用したシバ優占植生への誘導技術」1〜3)を組み合わせ応用することにより、水田畦畔に低コストかつ省力的にシバを導入・優占化させる方法を開発したので、以下に紹介する。


1. シバセル苗の作成(4〜5月)
1)シバの地上ほふく茎(写真1-1)を採取する。 注)コウライシバは被覆速度が遅く雑草に弱いため、必ずシバ(=ノシバ)を使用すること。
シバのほふく茎は、既存のシバ生育地から採取するか、購入または採取したシバ苗を畑に移植しておけば盛んにほふく茎を出す(写真1-2)ので、それを採取する。また、この方法で造成したシバ畦畔からも多数のほふく茎が得られるので、2回目以降はそれも使用できる。

2)採取したほふく茎を各節のすぐ下からハサミで1節ずつに切り分ける(写真1-3)。

3)園芸培土(商品名‘げんきくん1号’など)をつめた128穴セルトレイに、2)で切り分けたほふく茎を節から出た芽の先が地表に出るように植え付ける(写真1-4)。
注)土を詰めたセルトレイは、水稲の苗箱の上に載せると土が下からこぼれず持ち運びにも便利。

4)挿苗したセルトレイをハウス内または屋外に置き、1日1〜2回十分に灌水する。
注)特に活着前の苗は乾燥に弱いので、挿苗後しばらくは土が乾かないように注意する。

5)挿苗後30〜50日で移植に適した苗が出来上がる(写真1-5、1-6)。
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写真1-1.シバの地上ほふく茎   写真1-2.移植苗から伸び出したほふく茎(矢印)
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写真1-3.1節ずつに切断したほふく茎   写真1-4.切断茎をセルトレイに挿す
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写真1-5.育苗中のシバセル苗の様子   写真1-6.移植適期のシバセル苗
2. 植え付け前の除草剤散布(5〜6月)
 植え付け予定地に水田畦畔に農薬登録のあるグリホサート剤(またはグルホシネート剤)を散布して既存の雑草を枯らす。特にチガヤなど多年生イネ科雑草が残ると後で防除に困るので、この時点でしっかりと枯らすこと。スギナやヒルガオなどグリホサート剤が効きにくい雑草が多い場合は2,4−PA液剤(商品名 2,4−Dアミン塩)またはMCPAナトリウム塩液剤(商品名 MCPソーダ塩)を混ぜて散布する(写真2)。
写真    
写真2.植え付け前の除草剤散布    
3. セル苗の植え付け(5〜6月)
 除草剤散布後、雑草が枯れてきた段階(写真3-1)で、1.で作成したシバ苗を、1平米当たり4株を目安に植え付ける。(すなわち128穴セルトレイ1枚が約30u分の苗に相当する。)例えば50〜60cm幅の畦畔なら1列に50cmおきに、1m程度の広い畦畔なら2列に50cmおきに植え付ける。
注)セル苗は根が発達しているため乾燥にも比較的強いが、梅雨前から梅雨時にかけて植え付けた方が活着率は高く、増殖も速い。

[植え付け方法]
1)スコップ(できれば細長いもの)を植え付け地点に垂直に突き刺し(写真3-2)、斜めに傾け、開いた穴に緩効性肥料(水稲用基肥など)をひとつまみ投入する。

2)セル苗からシバ苗を1株取り出し(写真3-3)、2)の穴に差し込む。(写真3-4)

3)スコップを抜き取り、シバ苗の上から足で踏んで穴をふさげば植え付け完了。(写真3-5)
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写真3-1.シバ苗植え付け時の状況   写真3-2.スコップを地面に突き刺す
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写真3-3.シバ苗をセルトレイから取り出す   写真3-4.すき間に肥料とシバ苗を入れる
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写真3-5.上から踏みつけて植え付け完了    
4. 植え付け後の抑草剤・除草剤散布
1)シバ苗を植え付けて1ヵ月ほどが経つと雑草が再び繁茂してくる(写真4-1)ので、ビスピリバックナトリウム塩液剤(商品名 グラスショート液剤)500ml/10a<水量100L/10a>を散布する。スギナやヒルガオなどが多い場合は2,4−PA液剤100g/10aを混ぜて散布する。また、メヒシバが多く発生する場合には、アシュラム液剤(商品名 アージラン液剤)1500ml/10aを混ぜると効果的である。ただし、散布後の降雨などによりアシュラム液剤が水田中に流れ込むと、畦畔際の稲に強い生育抑制を生じる場合があるため、そのような場面での使用は控える。

2)以降は年に1〜2回(春および夏〜秋に)同様の薬剤散布を行い、必要に応じ肥料(水稲用基肥など)を散布することで、シバは春から秋にかけて旺盛に成長し(写真4-2)、植え付け翌年の秋にはほぼ畦畔全体がシバで覆われる(写真4-3)。
なお、冬生雑草の抑制と春のシバの萌芽を助けるために晩秋から早春にかけて刈り込み・集草を行うことが望ましい。その際、刈取り後の残渣を残したままにするとシバの衰退を招いてしまうので注意が必要である。その他の時期については、シバの草高は30cmを超えることはないので、特に美観を気にしなければ刈り込みは行わなくても良いが、ササなどが侵入してきた場合には、適度に刈り込みを入れるとその増殖を抑えることができる。
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写真4-1.植え付け1ヵ月後の雑草繁茂状況   写真4-2.植え付け2ヵ月後の様子
(雑草が枯れてシバが増殖中)
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写真4-3.畦畔全面に広がったシバ(植え付け翌年秋)    
5. 造成したシバ畦畔の様子
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写真5-1.植調研究所(茨城県牛久市)植付5年目   写真5-2.植調研究所(茨城県牛久市)植付5年目
注)シバを植えていない慣行畦畔は雑草が繁茂している
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写真5-3.秋田試験地(秋田県仙北郡)植付4年目
注)秋田試験地では、シバが全面を覆った3年目以降、春期にグリホサートイソプロピルアミン塩・MCPB水和剤(商品名 クサピカフロアブル)を散布して良好な結果を得ている。
  写真5-4.東海試験地(三重県度会郡)植付翌年の6月
6. シバ畦畔の造成・維持管理作業の流れと作業時間およびコスト
 以上述べてきたシバ畦畔の造成およびその後の維持管理作業を流れ図にまとめると図1のようになる。また、これらに係る作業時間とコストをまとめると、表1、表2の通りとなる。
 もし、一般に販売されている切りシバマット苗(安いものでも1m2分500円程度)を購入して30アール水田の1m幅の畦畔全面(260m2)に張り付けるとすると、苗代だけでも13万円が必要となる。また、重い切りシバ苗を運んで張り付ける作業もとても重労働である。それに比べると今回紹介した自作セル苗を使う造成方法は、はるかに低コストで省力的な方法といえよう。造成後の管理についても、セル苗植え付け当年と翌年は年に2〜3回の薬剤散布が必要であるが、シバが全面を覆う植え付け翌々年以降は、雑草の発生量が著しく減少し、発生してくる雑草の種類も減ってくるため、薬剤散布回数は減り、使用する薬剤数も少なくて済むようになるため、薬剤費も安くなる。
 シバが優占した畦畔は、一般の雑草畦畔に比べ、見た目も美しく、維持・管理労力も少なくて済む。今回紹介したシバ畦畔の造成・管理方法を是非とも各自で試していただき、その有用性を実感していただければ幸いである。

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図1.シバ畦畔造成作業の流れ図
表1.シバ地上ほふく茎を使った場合の苗作り・定植に係わる作業時間・資材費
(定植面積 260m2当たり※1
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表2.苗植え付け後のシバ畦畔の維持管理に係わる年間の作業時間・資材費
(260m2当たり※1
図
参考文献
1)(独)農業・食品産業技術総合研究機構近畿中国四国農業研究センター 2008.在来草種への植生転換と多段テラス造成による畦畔法面の省力管理マニュアル
2)橋本仁一・山木義賢・高橋宏和・川西孝秀・垣内仁・小林正典 2008 水田畦畔法面における抑草剤、除草剤を利用したシバ優占植生への誘導 1.薬剤反復処理による植生の変化.雑草研究53(別):36
3)橋本仁一・山木義賢・高橋宏和・川西孝秀・垣内仁・小林正典 2008 水田畦畔法面における抑草剤、除草剤を利用したシバ優占植生への誘導 2.効率的な誘導プログラム.雑草研究53(別):37
4)高知県畜産試験場・愛媛県畜産試験場・徳島県畜産試験場1995シバ草地造成マニュアル.地域重要新技術開発促進事業課題「暖地急斜面シバ草地の短期造成技術の確立」(平成4〜6年)成果報告
 
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